解説 〜 マッドネス
マッドネスは、トーメントで登場した新しい能力です。カードを捨てたときにプレイできる、というなんとも奇妙な能力ですが、便利なことに違いありません。でも、それだけではありません。マッドネスの奥深さについて解説します。

マッドネスとは

マッドネスを持つカードには、
マッドネス (コスト)
と記述されています。(コスト)の部分は、マッドネスコストであり、ここにはマナの支払いや、その他のコストが記述されています。そして、プレイヤーがマッドネスを持つカードを捨てたとき、そのプレイヤーはマッドネスコストを支払うことにより、そのカードをプレイすることができるのです。通常、マッドネスコストはマナ・コストよりも低くなっていることが多いので、普通にマナ・コストを支払ってプレイするよりも有利にプレイすることができます。
POINT! 捨てたカードがプレイできる!

マッドネスはいつでもプレイできる?

マッドネスを持つカードは、インスタントだけではありません。クリーチャーやエンチャントもあります。通常、クリーチャー呪文やエンチャント呪文は、自分のターンのメインフェイズでスタックが空のときにしかプレイできません。しかし、マッドネスはそのルールを無視します。マッドネスを持つカードは、そのカードを捨てたときであれば、いつでもプレイできるのです。相手のターンでも、アップキープでも、戦闘フェイズ中でも、そのカードを捨てることさえできればいつでもプレイできます。
POINT! マッドネスはインスタントと同じ!

クリンナップステップでも?

手札が8枚以上あると、自分のターンのクリンナップステップに手札が7枚になるようにカードを捨てなければならないのは、皆さんご存知の基本的なルールです。では、このときにマッドネスを持つカードを捨てたとしたら、そのカードをマッドネスの能力でプレイすることはできるのでしょうか? 通常、クリンナップステップにはプレイヤーは呪文や能力をプレイすることはできません。しかし、このルールにはひとつだけ例外があります。クリンナップステップ中になんらかの誘発型能力が誘発したり、状況起因効果が発生する条件が満たされると、プレイヤーは優先権を得ることができ、呪文や能力をプレイすることができるようになるのです。実は、マッドネスは誘発型能力を発生させるため、この条件を成立させることができます。これによりプレイヤーは優先権を得ることができ、呪文や能力をプレイできるようになります。これにより、クリンナップステップでも問題なく、捨てたカードをマッドネスでプレイできるのです。
POINT! クリンナップステップでもOK!

じゃぁ、マッドネスを打ち消せる?

マッドネスはあくまでも能力です。ですので、マッドネス自体を《対抗呪文》で打ち消すことはできません。しかし、マッドネスの効果により、プレイされたカードは呪文です。これは、普通に手札からマナ・コストを支払ってプレイしたときとまったく同様に、スタックに置かれて解決します。つまり、《対抗呪文》などの呪文を打ち消す効果、で打ち消すことが可能なのです。 また、その他の呪文のプレイに影響する効果の影響も受けます。たとえば、プレーンシフトの使い魔の効果によって、プレイするためのコストを減らすこともできますし、逆に《寒け》などによってコストが増えることもあります。また、《釣り合い》などの呪文をプレイしたときに誘発する誘発型能力も誘発します。
POINT! マッドネスも呪文です!

マッドネスの効果的な使い方

マッドネスがいくら有利な能力であるとしても、カードを捨てることができなければ意味がありません。しかし、マジックでは捨てたいときに勝手に手札のカードを捨てるようなことはできません。通常は正規のマナ・コストを支払って手札からプレイし、相手がこっちのカードを捨てさせる呪文を使ったときや、自分の手札を8枚以上になったときに便乗してプレイする、という方法もありますが、どうせならもっと積極的にプレイできたほうが良いに決まっています。そこで、マッドネスを有効活用するために、自分で手札を捨てることのできる手段を使いましょう。オデッセイブロックには、手札を捨てることのできる能力を持つカードがたくさんあります。いわゆる共鳴者というやつです。これを利用しない手はありません。共鳴者にもいろいろありますが、カードを捨てるために他のコストが必要になるようでは使いにくくなります。ですので、カードを捨てることのみをコストとするような能力を持つカードがぴったりです。代表的なものとしては、《野生の雑種犬》、《アクアミーバ》、《パッチワーク・ノーム》などがありますが、中でも《野生の雑種犬》は、ほぼいつでも手札を捨てることができ、それによって +1/+1 の修正を受け色まで変わるという非常に優秀なカードです。そのため、マッドネスを活用したデッキでは、《野生の雑種犬》が使われることが多くなります。また、《パッチワーク・ノーム》はアーティファクトなので、緑や青を使わないデッキでも使うことができます。特に赤の共鳴者は、ほとんどがランダムディスカードであるため、マッドネスを活用することが難しく、そのため赤のマッドネスカードを活用するデッキでは《パッチワーク・ノーム》が使われることが多いようです。
ところで、共鳴者+マッドネスというのはたしかに有効にはたらくコンボになりますが、それだけではどんどん手札が減ってしまうという欠点があります。手札を使えば減るのはあたりまえですから、これを欠点と呼ぶのはどうかとも思いますが、実は手札を減らさずにマッドネスを利用する方法もあるのです。それは、《マーフォークのものあさり》や《強制》などの、カードを1枚引いて1枚捨てる、というような能力です。これは一般的には、手札の不要なカードを別のカードに入れ替える目的で使われるのですが、これとマッドネスを組み合わせることにより、手札を減らさずにマッドネスを持つカードをプレイする、という非常に凶悪なコンボが可能になります。ただ、これらの能力は、共鳴者とは異なりカードを捨てるほかに何らかのコストが必要になりますので、1ターンに何度もプレイすることは難しいですが、手札を減らさずにカードを(しかも通常より少ないコストで)プレイすることができるのは非常に強力です。
POINT! 共鳴者とマッドネスは強力コンボ!

細かいお話

さて、今度はマッドネスの詳しいメカニズムを解説しましょう。実際にゲームをするときには、それほど必要になる知識ではありませんが、以下で解説するトリックプレイを理解するためには、マッドネスの正確なメカニズムを知っておく必要があります。
まずはマッドネスの定義から見てみましょう。総合ルールでは、マッドネスはこのように定義されています。
502.24. マッドネス
502.24a マッドネスは二つの能力を表すキーワードである。第一は、マッドネスを持つカードがプレイヤーの手札にある間に機能する常在型能力である。第二は、第一の能力が適用されたときに機能する誘発型能力である。「マッドネス [コスト]/Madness [コスト]」は、「いずれかのプレイヤーがこのカードを捨てる場合、そのプレイヤーはそれを捨てるが、それを自分の墓地に置く代わりにゲームから取り除いてもよい。」と「このカードがこれによりゲームから取り除かれたとき、それのオーナーはそれのマナ・コストではなく[コスト]を支払ってそれをプレイしてもよい。そのプレイヤーがそうしない場合、そのプレイヤーはそのカードを自分の墓地に置く。」ということを意味する。
502.24b マッドネス能力を使って呪文をプレイすることは、409.1b、409.1f-h の代替コストを支払うことに関するルールに従う。
この文章だけだと、ちょっとわかりにくいかもしれません。もう少し噛み砕いてみましょう。
マッドネスには、2つの能力があります。ひとつは、マッドネスを持つカードを手札から捨てようとするときに適用される常在型能力です。マッドネス持つを持つカードを手札から捨てようとしたとき、そのプレイヤーにはある選択が求められます。その選択とは、
「そのカードを墓地に置く代わりにゲームから取り除くか、それともそのまま墓地に置くか。」
ということです。
もしそのカードをマッドネスでプレイしたいなら、そのプレイヤーはここで「そのカードをゲームから取り除く」を選択しなければなりません。プレイする気がないなら「そのまま墓地に置く」を選択すればOKです。
ここで「そのカードをゲームから取り除く」を選択した場合、マッドネスのもうひとつの能力が働きます。もうひとつの能力は誘発型能力で、「マッドネスを持つカードを捨てて、それをゲームから取り除くことを選択した」ことによって誘発します。この能力を解決すると「そのカードのマナ・コストではなく[コスト]を支払ってそれをプレイしてもよい。」という効果により、そのカードをプレイすることができます。このプレイはマッドネスの誘発型能力の解決中に行われ、プレイしたカードはスタックに置かれます。そして、マッドネスの解決後にスタックに置かれたその呪文が解決されることになります。
整理するとこのようになります。
  1. マッドネスを持つカードを捨てる。
  2. そのカードを墓地に置く代わりにゲームから取り除く。
  3. マッドネスの誘発型能力が誘発し、スタックに乗る。
  4. マッドネスの誘発型能力を解決する。
  5. (その解決中に)そのカードをプレイする。
捨てたカードをプレイできるというのは、マジックのルール上、単純には処理できないのです。実際には、このような複雑なメカニズムにより、マッドネスは実現されているのです。
POINT! ホントはちょいと難しい!

マッドネスのルール変更について

2002年にトーメントで登場したマッドネスですが、それから4年以上の時を経て、時のらせんで再登場しました。それに伴い、マッドネスのルールは少々変更され、捨てたカードをプレイするのは、マッドネスの誘発型能力の解決中に行われることになりました。その結果、以下のトリックプレイはできなくなりました。
ある意味残念ではあるのですが、ルールをわかりやすくするためには仕方のない変更だったかと思います。 古くからマッドネスを使っているプレイヤーは注意してください。

古いマッドネスのルール

502.24a マッドネスは二つの能力からなる。一つは、カードが手札にあるときに影響を与える常在型能力、もう一つは、一番目の能力が適用されたときに発生する誘発型能力である。「マッドネス [コスト]」とは、「いずれかのプレイヤーが、自分の手札からこのカードを捨てようとする場合、そのカードは捨てられるが、そのカードを墓地に置く代わりにゲームから取り除いてもよい」と「この方法によりこのカードがゲームから取り除かれるたび、そのプレイヤーが次にパスをするまでの間、そのプレイヤーがインスタントをプレイできるときに、マナ・コストではなく[コスト]を支払うことで、そのカードが手札にあるかのようにプレイすることができる。次にそのプレイヤーがパスをしたとき、そのカードをそのプレイヤーの墓地に置く」の二つの意味を持つ。
以下は古いルールのもとでのみ可能だったトリックプレイです。現在のルールではできませんので注意してください!

マッドネストリックプレイその1

あなたは、《島》と《森》と《マーフォークの物あさり》をコントロールしています。現在はあなたのターンのメインフェイズ。このターン、あなたはまだ土地をプレイしていません。手札には《尊大なワーム》がありますが、土地はありません。そこであなたは、《マーフォークの物あさり》の能力をプレイしました。そしてそれを解決。うまい具合に《森》をドロー、そしてあなたは手札から《尊大なワーム》を捨て、マッドネスを宣言しました。 しかしながら、あなたは今現在《森》と《島》の2枚しかコントロールしていません。《尊大なワーム》のマッドネスコストは(2)(緑)、このままではプレイできません。 ところがあなたは、何のためらいもなく、今引いたばかりの《森》を場に出し、そのマナを使ってマッドネスで《尊大なワーム》をプレイしたのです!こんなことが可能なのでしょうか!?
これは、マッドネスの詳細なルール定義を悪用?した正規のプレイです。実際にこのようなプレイは可能です。なぜなら、マッドネスの誘発型能力が解決したあと、カードがマッドネスでプレイできるのは、そのプレイヤーが優先権を放棄するまで、だからです。そのカードをプレイせずに優先権を放棄してしまうと、そのカードは墓地に置かれますが、優先権を放棄するまではいつでもプレイ可能なのです。そして、土地をプレイするときには優先権の放棄は伴いません。つまりあなたは《尊大なワーム》のマッドネスの誘発型能力が解決した後、一度も優先権を放棄することなく土地をプレイし、正々堂々と《尊大なワーム》をプレイすることができるのです。
POINT! マッドネスの有効期間は、優先権を放棄するまで!

マッドネストリックプレイその2

現在、対戦相手のターンです。現在、あなたはが使えるマナはアンタップ状態の《島》1枚だけです。対戦相手があなたに対し《強迫》をプレイしました。あなたは手札を公開し、対戦相手はあなたの手札から、唯一の打ち消し呪文である《堂々巡り》を選択したため、あなたは《堂々巡り》を捨てました。そしてそのとき、あなたは《堂々巡り》をマッドネスでプレイすることを宣言し、ゲームから取り除きました。しかしながら、対戦相手の《強迫》はすでに解決中ですし、打ち消すべき呪文は他にありません。対戦相手は怪訝な顔をしましたが、《強迫》の解決は終了しました。そして続けて対戦相手は、《消えないこだま》をプレイしてきました。あなたのデッキに対し、《消えないこだま》は致命的で、これが通ればほぼ負けは確定です。しかもあなたの手札にはもう打ち消し呪文がないことは確認済みです。しかしあなたは、何のためらいもなく《島》をタップし、先ほどマッドネス宣言した《堂々巡り》をプレイしたのです。こんなことが可能なのでしょうか?
これもまた、先ほどの例と同じくマッドネスの詳細なルール定義を悪用?した正規のプレイです。先ほどの説明にもあったように、マッドネスの有効期間は、あなたが優先権を放棄するまで、です。《強迫》の解決中に、あなたが《堂々巡り》をマッドネスでプレイすることを宣言したことにより、マッドネスの誘発型能力が誘発します。この誘発型能力は、現在解決中の《強迫》の解決が終了した後にスタックに乗ります。そして、この誘発型能力を解決した後、アクティブプレイヤーである対戦相手が優先権を得ます。その状態で、対戦相手が《消えないこだま》をプレイしスタックに乗せました。ここで対戦相手が優先権を放棄し、あなたに優先権が移ります。そう、マッドネスの誘発型能力の解決後、この時点ではじめてあなたに優先権が回ってきたのです。つまり、まだ《堂々巡り》はプレイ可能なのです。
POINT! 優先権の遷移を考えよう!


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