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解説 〜 変異 |
変異ってなんだ?
変異を持つクリーチャーは以下のように表記されています。
変異 [コスト](あなたは(3)を支払うことで、これを 2/2 のクリーチャーとして、裏向きにプレイしてもよい。あなたはいつでも、変異コストを支払ってこのカードを表向きにできる。)
変異ってのは、非常に奇妙な能力です。
変異を持つクリーチャーは、(3)を支払うことによって裏向きにプレイすることができます。そうすると、そのクリーチャーは、裏向きのまま場に出ます。(もちろん、通常通りマナ・コストを払って表向きにプレイすることもできます)
プレイしたあなたには、そのカードが何のカードなのかはわかっていますが、対戦相手にはそのカードの正体がわかりません。
裏向きのクリーチャーは、名前も、色も、クリーチャータイプも、何の能力も持たない2/2のクリーチャーです。点数でみたマナコストは0点です。プレイするときに(3)を支払いますが、これはマナ・コストではありません。単に変異クリーチャーを裏向きにプレイするためのコストです。
裏向きのクリーチャーは、変異コストを支払うことによって、いつでも表向きにすることができます。表向きになることにより、そのクリーチャーは本来のクリーチャーになるのです。
なぜ裏向き?
変異を持つクリーチャーを裏向きにプレイすることにより、どんな利点があるのでしょうか?
1.低コストでプレイできる。
変異を持つクリーチャーは、マナ・コストがどんなに高くても(3)でプレイすることができます。そのため、序盤あまりマナが支払えないときでも、手札で腐らせることなく場に出すことが可能です。また、中には変異コストがマナ・コストよりも低く設定してあるクリーチャーもいます。たとえば、《賛美された天使》はマナ・コストが(4)(白)(白)ですが、変異コストは(2)(白)(白)です。変異がなければ、《賛美された天使》は最速6ターン目にならないとプレイできず、攻撃に参加できるのは7ターン目からです。(ただし、6ターン目に6マナ出せるとは限りません。普通は6マナ出せるようになるには、8〜10ターンかかると思ったほうがよいでしょう)
しかし、変異を使えば、3ターン目に場に出して、4ターン目に表向きになって攻撃することができるのです。4/5の飛行クリーチャーが4ターン目に攻撃できるのは脅威というほかはありません。変異を使わずに最速で攻撃できる7ターン目には、すでに16点ものダメージを対戦相手に与えることができるのです。
2.弱いクリーチャーを強く見せることができる。
裏向きにプレイしたクリーチャーは、かならず2/2です。本来のパワータフネスが1/1とか0/1でも、2/2クリーチャーとして使用することができます。
3.色事故防止になる。
変異クリーチャーを裏向きにプレイするためのコストは(3)ですあり、色マナを必要としません。ですので、本来なら色が合わずにプレイすることができないクリーチャーも、とりあえず裏向きに場に出すことができます。
4.相手を惑わすことができる。
裏向きにプレイしたクリーチャーの正体は、あなたにはわかりますが対戦相手にはわかりません。しかも、あなたの好きなときに表向きにできるのですから、戦闘を非常に有利に進めることができます。
たとえば、あなたが2/2の裏向きのクリーチャーで攻撃したとき、対戦相手はそれをブロックするかどうか非常に悩むことになります。もし3/3クリーチャーでブロックすれば、3/3クリーチャーが一方的に勝ちますが、ブロックした後に表向きになり、それが4/4クリーチャーだったとしたら、逆に3/3クリーチャーが一方的に殺されてしまいます。なので、防御側は非常に迷います。逆に攻撃側は、相手がブロックすることを期待して、正体が4/4の裏向きクリーチャーで攻撃してもよいですし、正体が1/1の裏向きクリーチャーで、ブラフをかけることもできるのです。
5.相手の除去カードを無駄に使わせる。
あなたが裏向きにクリーチャーをプレイしたとしましょう。相手にはそのクリーチャーの正体がわかりません。そのクリーチャーが危険なものであった場合、早く除去しなければなりません。しかし、ただのザコクリーチャーだったら、貴重な除去カードを無駄に使わせることができます。
6.変異誘発能力を使うことができる。
変異クリーチャーの中には、表向きになることで誘発する能力を持つものがいます。その能力を使うためには、裏向きで場に出す必要があります。
7.壁が攻撃に参加できる。
変異クリーチャーが壁だったとしても、裏向きで場に出せば(クリーチャータイプを持たないので)攻撃に参加することができます。たとえば、正体が0/4の壁である裏向きのクリーチャーで攻撃し、相手の2/2クリーチャーがブロックしたら、戦闘ダメージをスタックに乗せて表向きになることで、ブロッククリーチャーを一方的に殺すことができます。
このほかにも、いろいろな利点があるでしょう。
裏と表の関係は?
裏向きのクリーチャーが表向きになった場合、裏向きのクリーチャーと表向きになったクリーチャーとはどういう関係があるのでしょうか?
実は、それらは同じクリーチャーとみなされます。裏向きのクリーチャーは何の能力も色も持たない 2/2 クリーチャーですが、表向きになることにより、元の特性に戻ります。つまり、単に特性が変化するだけで全く同じクリーチャーとみなされます。ですので、裏向きのときにエンチャント(クリーチャー)が付いていたり、カウンターが乗っていたりしても、表向きになったときにエンチャントが外れたり、カウンターが取り除かれたりはしません。また、新たに場に出たわけでもないので、クリーチャーが場に出たときの能力が誘発することもありません。
また、裏向きのクリーチャーがダメージを受けていた場合、表向きになってもダメージは残ります。ですので、2/2 の状態で1点のダメージを受けていた裏向きのクリーチャーが、表向きになって 3/1 になると、致死ダメージにより死んでしまいます。注意しましょう。
裏向きのときに何らかの呪文や能力の対象となり、その解決前に表向きになったとしてもその呪文や能力は表向きになったクリーチャーに対して影響します。表向きになることによって逃げることはできません。ただし、たとえば裏向きの状態で《闇への追放》の対象になったクリーチャーが、対応して表向きになりそのクリーチャーが黒だったとすると、《闇への追放》は対象不適正により打ち消されます。こういった逃げ方はできます。
変異はスタックに乗らない?
対戦相手: | (1)(緑)(緑)払ってこの裏向きのクリーチャーを表にします。 |
あなた : | では、それにレスポンスして裏向きのクリーチャーに《ショック》をプレイします。 |
いかにもありがちなシチュエーションですが、実際にはこのようなプレイはできないのです。
なぜなら、裏向きのクリーチャーを表向きにする行為は、
スタックには乗らないからなのです。
変異は、起動型能力に似ていますが起動型能力ではありません。そもそも裏向きのクリーチャーは何の能力も持たないのですから当然です。これはルール上は特別な行動とみなされ、対応することはできません。
逆に、何かに対応して表にすることは可能です。
対戦相手: | その裏向きのクリーチャーに《ショック》をプレイします。 |
あなた : | では、それに対応して、(1)(緑)(緑)払ってこの裏向きのクリーチャーを表にします。 こいつは3/3なので《ショック》を受けても生き残ります。 |
こんなプレイは可能なのです。
トーナメントでの変異の扱い
変異は、その特性上、イカサマやトラブルの原因になります。そこで、トーナメントで変異クリーチャーを使うときには、守らなければならないいくつかのルールがあります。
複数の裏向きのクリーチャーは区別できなければならない
裏向きのクリーチャーを複数場に出す場合、それらが区別できなければなりません。そのために、裏向きのクリーチャーには番号の書いたカウンターなどを乗せる必要があります。なぜなら、裏向きのクリーチャーをどういう順番で場に出したか、どの裏向きのクリーチャーで攻撃やブロックを行ったのか、そういった情報はゲームを進める上の戦略上、非常に重要な情報です。それらをはっきりさせるためには、裏向きのクリーチャーを区別できなければ意味がありません。
裏向きのクリーチャーが場を離れるときには、表を公開しなければならない
なぜなら、対戦相手にはそれが本当に変異を持つクリーチャーなのかどうかがわからないからです。ひどい話、相手にわからないのであれば、手札の入らないカードを変異クリーチャーを装って、場に出すことができます。表にしない限り、それが本当に変異クリーチャーなのかどうかは相手にはわからないのですから、そうやって相手をだますことができます。そういった不正なプレイを防ぐため、裏向きのクリーチャーが場を離れたときや、ゲームの終了時にはそれが本当に変異を持つクリーチャーなのかどうかを対戦相手に知らせる必要があるのです。このルールは非常に厳しく、守らないと反則負けになります。実際に、プロプレイヤーが間違って変異を持たないクリーチャーを裏向きにプレイしてしまったため、重要なゲームを落としてしまったことさえあります。
ただし、フェイズアウトしたときだけは例外です。その場合は、表側を公開する必要はありません。
変異誘発能力
変異を持つクリーチャーの中には、こんな能力を持つものがあります。
《皮を剥ぐもの》
変異 (3)(黒)(黒)(あなたは(3)を支払うことで、これを 2/2 のクリーチャーとして裏向きにプレイしてもよい。あなたはいつでも、変異コストを支払ってこのカードを表向きにできる。)
皮を剥ぐものが表向きになったとき、黒でないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。それは再生できない。
このクリーチャーは、表向きになったときに、クリーチャーを破壊するという能力を持ちます。これは、このクリーチャーが表向きになったときに誘発する誘発型能力です。これを
変異誘発能力といいます。誘発型能力ですから、これはスタックに置かれて解決します。表向きにする行為はスタックには置かれませんが、それによって誘発する変異誘発能力はスタックに置かれます。ちょっとややこしいので注意が必要ですね。
変異誘発能力は、その能力を持つクリーチャーが表向きになったときにだけ誘発します。たとえば、裏向きのクリーチャーが裏向きのまま破壊されると、表を見せなければなりませんが、そのときには誘発しません。なぜならそれは表を公開しただけであり、表向きになったわけではないからです。
変異FAQ
変異に関して、よくある質問とその回答です。
墓地から変異クリーチャーを場に出すときに裏向きに出せますか?
それはできません。変異は、裏向きに「プレイ」することができるだけで、裏向きに「場に出せる」わけではありません。裏向きにプレイしたなら、裏向きに場に出ることはできますが、変異を持つクリーチャーを直接場に出すときには、裏向きに晩出だすことはできません。
戦闘ダメージをスタックに乗せて表向きにできますか?
はい、できます。その場合、実際にダメージを与えるのは表向きになったクリーチャーです。ですから、そのクリーチャーがダメージを与えたときに誘発する能力を持っていれば、その能力は誘発します。たとえば、裏向きの《漆黒の刃の死神》で攻撃し、相手がブロックしなかったのを確認して、これを表向きにすれば、相手のライフを半分にすることができます。
《未来予知》でライブラリのトップから変異を裏向きにプレイできますか?
はい、できます。《未来予知》はライブラリのトップのカードを手札にあるの同様に「プレイ」することができます。ですので、裏向きにプレイすることが可能です。でも、相手にはその正体はばればれですけどね。
《呪文乗っ取り》で奪った変異クリーチャーを裏向きにプレイできますか?
残念ながら、それはできません。なぜなら、《呪文乗っ取り》は奪ったカードを「マナ・コストを払わずにプレイ」することができるだけであり、「裏向きにプレイする」ことは許されていないのです。
裏向きのクリーチャーを《帰化》で破壊できますか?
できません。裏向きのクリーチャーは無色ですが、アーティファクト・クリーチャーではありません。
裏向きのクリーチャーを《旗印》で強化できますか?
できません。裏向きのクリーチャーは、クリーチャー・タイプを持たないので、複数場に出ていても《旗印》では強化されません。
自分の裏向きのクリーチャーの表側を見てもよいのですか?
はい、かまいません。あなたはいつでも、自分がコントロールする裏向きのクリーチャーの表を見ることができます。そしてもちろん、対戦相手の裏向きのクリーチャーのコントロールを奪えば、その表を見ることもできます。
裏向きでプレイされたクリーチャーを、《禁制》で打ち消すことができますか?
はい、可能です。裏向きにプレイされたクリーチャー呪文の点数で見たマナ・コストは0です。ですので、《禁制》で打ち消すことができます。
《破滅的な行為》の能力をX=0でプレイしたら、裏向きのクリーチャーを破壊できますか?
はい、可能です。裏向きのクリーチャーの点数で見たマナ・コストは0です。ですので、X=0の《破滅的な行為》で破壊することができます。
(3)を払って変異を持つクリーチャーを裏向きにできますか?
できません。一部の変異クリーチャーは、裏向きになる能力を持っていますが、そういった能力を持たない変異クリーチャーは、自分で裏向きになることはできません。
《背教》などで裏向きになった変異クリーチャーをもう一度表にすることはできますか?
はい、できます。通常通り変異コストを払うことによって表になることができます。
裏向きのクリーチャーを《送還》で手札に戻すときも、表を公開しなければならないのですか?
そうです。場を離れるときには、いつでも表側を公開しなければなりません。(フェイズアウトを除く)